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執筆者の写真秀志 池上

ケトン食が故障を癒す


1.断食療法

 皆さんは断食が治らないとされた病気や関節炎などの最後の望みとして昔から使われてきたのは、ご存知ですか?おそらく民間療法として、かなり古くから知られていたと思いますが近代に入って体型的にまとめ上げた先駆者としてはオットー・ブーヒンガー(1878―1966)がよく知られています。

 船医だった彼は扁桃腺炎と関節炎で船医としての仕事を諦めざるをえませんでした。当時これらの病気の治療方法はほとんどなく、彼は最後の望みとして数週間の断食療法を実施するためにフライブルグへと向かいました。断食療法が功を奏し、彼は再び船員として職場復帰を果たしました。その後に断食療法を体系的にまとめ上げ、1935年に「断食療法 (原題)Das Heilfasten」という本を書きあげました。

2.断食療法のメカニズム

 断食療法のメカニズムはケトン体という物質が体内で多く分泌されることに伴います。我々の体は大きく分けると1.有気的代謝と2.無気的代謝でエネルギーを作っています。簡単に言えば、エネルギー代謝に酸素を必要とするかしないかです。スプリントや中距離レースのような激しい運動をしない限り、基本的に人間は有気的代謝によって生命を維持しています。

この有気的代謝では主に脂肪酸が使われていますが、肝臓や筋肉に蓄えられている糖質(グリコーゲンの形として)も多く使われています。普段は主に糖質と脂肪酸を同時に使用しているわけですが、貯蔵量に圧倒的な差があります。糖質1gのカロリーは4キロカロリーです。個人差はありますが、肝臓と筋肉に蓄えられている糖質の量は200gから600gです。ここでは400gと仮定しましょう。そうすると4x400=1600で糖質のエネルギーは1600キロカロリーです。一方で脂肪は1gあたり9キロカロリーあります。体重60㎏で体脂肪率10%という比較的細身の人でも体内に6㎏の脂肪を蓄えているので、6000x9=54000キロカロリーが体内にある訳です。ざっと糖質の30倍以上のエネルギーがある訳です。

普段は食事で糖質を摂取しているので糖質が0に近づくことはありませんが、断食療法では体内の糖質貯蔵量を0に近づけていきます。有気的脂肪分解系の代謝回路においては普段は脂肪酸から合成したアセチルコエンザイムAという物質に変換してから使われるのですが、脂肪酸をアセチルコエンザイムAに変換する時に必要なのがオキサロ酢酸と呼ばれる物質です。このオキサロ酢酸が糖質から構成されているので、糖質が枯渇すると体内で十分な量のオキサロ酢酸が作れなくなります。

これでは有気的脂肪分解系の代謝回路が回らなくなるので体はアセト酢酸、β―ヒドロキシ酪酸、アセトンという物質からケトン体を作ります。そしてこのケトン体をアセチルコエンザイムAに変換し有気的脂肪分解系の代謝回路を回していきます。

要するに、糖質が枯渇していくと代謝の仕方を変えて必要なエネルギー量を維持するが、その時にケトン体という物質を体内で合成するということです。

3.ケトン体の働き

 ではこのケトン体何が良いのかということですが、優れたフリーラディカルの除去能力を有します。ガン、アルツハイマー、関節炎、糖尿病、脳梗塞などの進行性の病気はこのフリーラディカルによるDNAの酸化損傷によって引き起こされます。少なくとも、大きく関与しています。ケトン体はこのフリーラディカルの除去能力が極めて高いのです。

 またケトン体が出ることによってサーチュイン3という遺伝子が目覚めるのですが、このサーチュイン3がミトコンドリアの働きを活性化し、DNAの酸化損傷を修復してくれます。

それに加えて、ケトン体とは関係なく飢餓状態に置かれることによってサーチュイン2という遺伝子が目覚めますが、このサーチュイン2も損傷した細胞の修復を急激に推し進めます。

4.断食療法のやり方

 断食療法にも色々なやり方があり、全く食べないわけではありません。古川健司という医師はガン患者のために糖質の摂取量を25%に減らし、それとMCTオイルを組み合わせることによってケトン体の合成量を増加させる手法を取っていますし、デイヴ・アスプレーという人は15時間―18時間は絶食して昼食と夕食に低糖質食を取るという手法を取っています。アスプレーの手法でもMCTオイルの摂取が取り入れられ朝食にMCTオイルとギー(低温で加熱し、乳清と蛋白質を除去したバター)を入れたコーヒーを摂取することで食欲を抑えられると述べています。

 また一部のウルトラマラソンのランナーで低糖質食を実践している選手もいます。トレーニングと低糖質を組み合わせることでケトン体は容易に出ると思われます。

 しかしながら、マラソンランナーのトレーニングにおいては糖質の摂取がものすごく大切です。理由は中強度から高強度のトレーニングで必要な総エネルギーの量が多いからです。スプリンターであれば、代謝の割合的には糖質が多く必要となりますが、エネルギーの総需要が少ないので問題ありません。逆にウルトラマラソンのランナー達は脂肪を多く燃やすペースで走らなければゴールにたどり着かないので、こちらもあまり問題ありません。

 しかし長距離ランナーのトレーニングにおいては、質はウルトラマラソンよりも高く、総エネルギー需要量はスプリンターよりも圧倒的に多いので糖質をこまめに摂取しなければ、筋グリコーゲンの貯蔵量が減少していき、疲労感の増大や免疫系の低下を招きます。私自身の経験としては、低糖質食は競技者には適していません。痩せたくて走っている人にとっては一考の価値があるでしょう。

私が使っているMCTオイルは下記のリンクの商品です。473ミリリットルで1100円くらいです。日清食品などから出ているものはざっと4倍はします。iherbを使うのが初めての方は下記のリンクから購入していただくと5%オフになります。

参考文献

古川健司「ケトン食がガンを消す」

Dave Asprey ‘’The Bullet Proof Diet’’

David Martin.Ph.D and Peter Coe ‘’Better training for long distance runners’’

Prof. Dr. Michaela Döll ‘’Warum Papay kühlt und Zucker heiss macht’’

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ランニング書籍

講師紹介
​ウェルビーイング株式会社代表取締役
池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

​ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤 哲也

IMG_5423.JPG

経歴

中学 京都市立音羽中学校

高校 洛南高校

↓(競技引退)

大学 立命館大学(陸上はせず)

​↓

大学卒業後

一般企業に勤め、社内のランニング同好会に所属して年に数回リレーマラソンや駅伝を走るも、継続的なトレーニングはほとんどせず。

2020年、ウェルビーイング株式会社の設立をきっかけに約8年ぶりに市民ランナーとして走り始る。

感覚だけで走っていた競技者時代から一変、市民ランナーになってから学んだウェルビーイングのコンテンツでは、理論を先に理解してから体で実践する、というやり方を知る。始めは理解できるか不安を持ちつつも、驚くほど効率的に走力が伸びていくことを実感し、ランニングにおける理論の重要性を痛感。

現在は市民ランナーのランニングにおける目標達成、お悩み解決のための情報発信や、ジュニアコーチングで中学生ランナーも指導し、教え子は2年生で滋賀県の中学チャンピオンとなり、3年生では800mで全国大会にも出場。

 

実績

京都府高校駅伝区間賞

全日本琵琶湖クロカン8位入賞

高槻シティハーフマラソン

5kmの部優勝 など

~自己ベスト~

3,000m 8:42(2012)
5,000m 14:57(2012)
10,000m 32:24(2023)
ハーフマラソン 1:08:21(2024)

​マラソン 2:32:18(2024)

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