だいぶ前に『LLLTとは何か?』という記事を書いています。その記事内では消炎、鎮痛作用のみにフォーカスして書いているのですが、実はLLLTはもっと多岐にわたって効果を期待することが出来ます。それは掘り下げていけば、癌、関節炎、動脈硬化、しみ、しわ、老化、視力の衰えなど様々な体内で起こる望ましくない現象のメカニズムは非常に似通っているからです。
再びLLLTとは何か?
改めてLLLTとは何かということですが、これはLow Level Laser Therapyの頭文字をとったもので、直訳すると低出力光線療法という意味になります。具体的にはどのような光線かと言うと、600ナノメートルから1000ナノメートルくらいの波長の光のことです。レーザーと言うと少しメカニックであったり、科学的に聞こえるのですが、要するに光のことです。紫外線や赤外線という言葉はなじみがあると思います。紫外線は波長が短すぎて人間の目には認識することのできない光のことです。波長で言うと400ナノメートル以下の長さになります。一方で、赤外線は波長が長すぎて人間の目には見えない光の長さで波長で言うと、700ナノメートルを超えるあたりからが赤外線になります。そして赤外線の中でも非常に波長の長いものは遠赤外線(3000ナノメートルから10000ナノメートル)と呼ばれ、体を温める治療器具として使われています。ただ、遠赤外線は単なる温熱療法で入浴とさほど変わらないので、それほど大きなメリットはありません。また1㎝ほどしか組織の中に入っていかないのも欠点です。人間の温熱感覚器は皮膚表面にあるので、それでも十分に温かく感じますし、熱が伝わって実際にはもう少し奥に入っていくとは思いますが、お風呂やハロゲンヒーターとそう大きくは変わりません。
一方のLLLTは600ナノメートルの赤色光線(人間の目で見える)と800‐900ナノメートルの赤外線(目で見えない)の組み合わせの光を使います。美容専用のものであれば400ナノメートル代のものを使うこともあります。800‐900ナノメートル程度の赤外線であれば、温熱効果はほとんどもしくは全くありません。そして、この800‐900ナノメートルの光の方が深い組織まで届き、600ナノメートルの光は皮膚表面くらいです。ですので、美容専用のものは最も長い波長で600ナノメートル台のものもあります。だいたいは650ナノメートル前後と850ナノメートル前後の波長の組み合わせの機器が多いです。ものによってはそれに950ナノメートル、たまに400ナノメートル台、1000ナノメートル台の波長を組み合わせたものもあります。最低限650ナノメートルと850ナノメートル前後の波長の組み合わせのものがお薦めで、出来れば950ナノメートル前後の波長もあった方が深層部の組織に届くので望ましいです。
老化、慢性痛、生活習慣病はなぜ起こる?
さて、LLLTのメカニズムの話に入る前に、老化、慢性痛、癌、Ⅱ型糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病、抜け毛、しみ、しわなどの望ましくない生理現象がなぜ起こるのかということを解説したいと思います。実はLLLTは単なる鎮痛、消炎作用だけではなく、美容から、記憶力の向上、インポテンツ、癌、心筋梗塞、動脈硬化など非常に幅広い症状に有効に働きかけ、そして副作用が無いからです。
しかしながら、いきなりそういわれるとあなたは胡散臭いと感じませんか?「おいおい、おまじないじゃないんだから」と言いたくなりますよね?ただこれはメカニズムを説明するとすぐに分かっていただけると思います。というのも現れている現象が、癌であったり、関節痛であったり、シミやしわであったりするだけでメカニズムそのものは同じだからです。
全てのカギを握る細胞
私達の体は肉眼で見ると非常に安定しており、あまり変化のないように見えます。ところが、細胞レベルで見ると私がこのブログを書き始めた二年半前と現在の私では物質的には2%しか同じではありません。毎日顔を合わせる家族であれば、二年前と比べて98%は物質的に別人だと言われてもにわかには信じられないと思います。
私達の体内では常に化学反応を繰り返し、物質の離合集散を繰り返しているのです。人間の体を分解していくと、細胞というのが一応便宜上の最小単位として考えられます(勿論、さらに細分化は可能です)。この細胞は人間の体に60兆あるとも137兆あるとも言われています。そして、細胞の中にあるDNAには全ての情報が書き込まれており、心臓の細胞も、肝臓の細胞も上腕二頭筋の細胞も全て元は同じ細胞です。同じ情報が書き込まれているにもかかわらず、細胞が心臓に行けば心臓になり、爪に行けば爪を形成します。ここにも生命の神秘があり、健康を考える上で大きなカギを握るのですが、話すと長くなるので今回は割愛します。
この細胞は常に死に、そして新しいものに生まれ変わっていきます。その数は一日に6000億個とも言われています。肉眼で見れば、10日前の私も今日の私も同じように見えるのですが、細胞レベルでは10日間で6兆個の細胞が生まれ変わっています。このペースで細胞が生まれ変わっていけば、1か月後にはB’zの稲葉さんみたいなイケメンになるんじゃないかと期待したくもなるのですが(趣味が一昔前のOLですみません)、実際にはみなさんご存知の通り人間の顔は10日間では変わりません。
これは基本的には細胞が死んだら、その箇所の細胞はそのまま情報を引き継いで新しい細胞になるからです。基本的にはそのままの情報を引き継いでいるので、大きくは変わりません。ある社員が退職しても引継ぎをきちんとしていれば、同じ会社の同じ部署のカスタマーセンターのお姉さんは常に同じような受け答えをしてくれるというのと同じです。
ただ人間は成長したり、年をとったりと少しずつ変化していきます。これは成長に応じて、若しくは加齢に応じて少しずつ違う情報が引き出されていくからです。またトレーニングによって負荷をかけるとそれに適した情報が引き出されるので、スプリントの為の練習をすれば、短距離が速くなり、マラソンの練習をすれば、マラソンが速くなります。これら細胞の生まれ変わりはまだ解明されていない部分も多々ありますが、物質であることに変わりはないので、基本的には全て物理の法則に従います。ですから、陸上競技においてはトレーニングの原理原則を理解することが大切になります。
体の成長やトレーニング刺激に対する適応のように望ましい細胞の生まれ変わりもあれば、老化のような望ましくない細胞の生まれ変わりもあります。老化というのはこの細胞が生まれ変わるときに、ダメージを受けた細胞がコピーミスを起こすのです。なので、細胞に受けるダメージが大きければ大きいほど、老化は早くなります。このダメージは精神的なものと、身体的なものの両方です。明確な論証は出来ないものの、やはり苦労の多い人生を歩んできた人の顔には多くのしわが刻み込まれています。ある枯れ専女子が好きなタイプの男性を聞かれて、「この人苦労してきたんだろうな、っていう感じの顔の人が好き」と言っていましたが、あながち的外れではありません。また配偶者に先立たれて一気に老け込む人や事業が上手くいかずに一気に老け込む人、定年退職を気に情熱を燃やすものがなくなって一気に老け込む人など、メカニズムは解明できないものの精神的なダメージが肉体に悪影響を及ぼすことは皆さんご存知だと思います。
そして、この程度がひどくなればちょっとコピーミスどころではなく、細胞の生まれ変わり方そのものが変わってしまいます。通常はアポトーシスといって、古くなった細胞は徐々に分解され、最後は食細胞に食されます。イメージで言えば落ち葉が微生物に分解されて最後はなくなるような感じで周囲への悪影響はありません。ところが、身体的、肉体的ストレスで傷ついた細胞はDNAに傷がつきネクローシスという破裂するような細胞死を引き起こします。この時炎症を起こし、周囲の細胞も傷つけます。またDNAが損傷しているので、ネクローシスで死んだ細胞からは、ネクローシスの細胞が生まれてきます。通常は傷ついた細胞は新しく生まれ変わるので、筋肉痛は数日でとれますし、捻挫をしても数週間で治ります。
ところが、慢性痛、癌、動脈硬化などは体内で生成しているので、時間の経過とともに治る訳ではなく、寧ろ進行していくことが多いのです。
肉体的ストレス・精神的ストレスを受けた時細胞内では何が起こる?
さて、肉体的ストレス、精神的ストレスと言うととても抽象的であるうえに、肉体的ストレスは紫外線、大気汚染、インターバルトレーニングから、精神的ストレスは配偶者の浮気、借金、レンジでおかずを温めていたのを忘れてご飯を食べ終わってしまったなど多岐にわたります。
ただ、細胞内で起きていることは常に同じです。私達が生きていく上で必要なエネルギーは主に細胞内のミトコンドリアという器官で酸素を用いて作られます。その時、化学反応にはシトクロムC酸化酵素という酵素が必要になります。精神的・肉体的ストレスを受けると細胞内では一酸化窒素が生じるのですが、この一酸化窒素とシトクロムC酸化酵素が結びつくとシトクロムC酸化酵素が正常に働かなくなります。シトクロムC酸化酵素が働かなくなった細胞内では細胞が傷ついたり、コピーミスにつながったりするので、その数が多くなれば、老化、しみ、しわ、抜け毛につながり、その程度がひどければ癌、動脈硬化、心筋梗塞、アルツハイマーなどにつながります。
ところが、600ナノメートルから1000ナノメートルの光を当てるとシトクロムC酸化酵素が一酸化窒素から守られることが分かっています。またそれだけではなく、シトクロムC酸化酵素はこの長さの波長を良く吸収し、細胞内でのエネルギー産生が活発になります。エネルギーが必要と言うと、何かインターバルトレーニングでもやるようなイメージがあるかもしれませんが、体温維持、呼吸、心臓を動かす、寝ている時の筋修復、食べ物の消化など、無意識にやっているような行動も含めて人間の体内の一切合切の活動はエネルギーが無いとできません。そのエネルギーの産生量が大きくなるので様々な治癒過程が促進したり、抜け毛が治ったり、男性ホルモンが上昇したり、老化が遅くなったりと様々な効果が期待できるわけです。
具体的にはどの機械を使うべき?
さて、このように大きな効果が期待でき、副作用のないLLLTですが、残念ながら日本国内では、全然普及していません。もし買うとすればどのような機械を買えばよいのか、ここでは簡単なガイドラインを示しておきたいと思います。
先ずは波長ですが、600ナノメートルから1000ナノメートルの間で複数の波長の長さの組み合わせのものが良いです。これは波長によって、届く組織の深さが違うからです。波長が長いものは深部まで届きます。逆に言えば、美容目的であれば皮膚の表面にさえ届けばよいので、600ナノメートルのものを一つ買えばよいと思います。中には400ナノメートルと600ナノメートルの組み合わせのものもあります。ただ、LLLTはちょっとした切り傷やねんざなど急なケガにも使えるので、どうせ買うのであれば600ナノメートルの1000ナノメートルのうちの2-4種類の波長の長さの組み合わせのものがお薦めです。
次に周波数ですが、これは1秒間に何回オンとオフを繰り返しているのかということです。100ヘルツであれば1分間に100回オンとオフを繰り返しているということですが、勿論、人間の肉眼では連続照射に見えます。
この周波数ですが、研究者・グループの間で若干の相違はあるものの連続照射から100ヘルツくらいのものが有効であるというのが共通見解です。パルスの利点は皮膚や皮膚表面の色素などを容易にすり抜け、より深くの組織まで届くことです。また、LLLTも若干温かくなるのですが、パルスであればこの温度上昇を防ぎ、急性期の故障や睾丸、脳のような熱に弱い器官への照射にも適しています。
照射距離
次に照射距離ですが、照射距離が近いことの利点は一点に集まる光子の量が多くなることです。一方で、照射距離を長くすると照射範囲が広くなります。どちらが良いのかということは一概には言えませんが、照射距離を長くすると治療時間を長くする必要がありますし、ピンポイントで痛めている場合にはガラス管を装着して一点に光子を集中させることが出来る機械もあります。あくまでも個人的な感想ですが、ガラス管を装着して一点に集中させると効果はより感じられます。
ただ、痛みのある個所だけに治療を施すというのも良くある間違いの一つです。たとえそれが関節炎であったとしても、心筋梗塞や動脈硬化などと同じように全身の病気だという風に捉えるべきだと私は考えています。学術レベルで言っても、体内での低度で慢性的な炎症レベルが上がってある関節に痛みが出たり、全身の細胞に元気がなく、治癒過程が促進されていないというケースが多くあります。個人の経験レベルで言っても、痛いところだけを治療しても治らないことが多いですし、逆に故障する時も全身が疲れているときに故障のリスクは大きくなります。全身に光を当てるとは言わないまでも、関連のありそうな箇所に順番に光を照射することは重要であるという風に考えています。
LEDかレーザーか
これまではレーザータイプのものが主流で、レーザータイプでなければ効かないと考えられていた時もありました。レーザーの利点は光子を一か所に集中して集めることが出来るので、局所的な治療効果が高いことです。
LEDは板にたくさんの穴があり、そこから光を放出するのですが、利点は一度に広い範囲に照射できることです。どちらも一長一短あるので、理想は両方買い揃え、レーザーによる局所治療とLEDによる全身への照射を並行させて行うことがベストだと思います。個人的な体験談としては、寝る前に15分ほど太ももから上半身の全面全てにLEDで照射すると熟睡出来るように感じます。
最後にLLLTについてもっと詳しく知りたい方へ
『詳説LLLT』という小冊子をご用意しております。下記のURLから問い合わせページに飛んで「LLLT」と入力して送信してください。折り返し『詳説LLLT』をお送りさせて頂きます。