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楽なペースのランニングで速くなれる5つのワケ

 突然ですがあなたは、ゆっくりと走る練習には意味がないと思っていませんか?距離走やスピードワークなどのポイント練習だけ頑張れば速くなれる、という考え方になってはいませんか?


 実は、ゆっくりと走る練習というのは、思っている以上にめちゃくちゃコスパが良いんです。このゆっくり走る練習のことを「低強度走」と言います。読んで字のごとく、低い強度=つまり楽なペースで行う練習のことです。これが、実は長距離走やマラソンが速くなるためにはとても大きな役割を果たしてくれます。


 ではなぜゆっくりと走ることが効果的なのか?またその科学的側面とは?今回はそんなテーマについて書いてみたいと思います。


そもそも低強度走とは??

 本題に入る前に、低強度走の定義をはっきりさせておきましょう。これは単純明快に説明できます。低強度走というのは「主観的に楽に感じる強度」で走ることです。はい、たったこれだけです。主観でいいのです。あなた自身が楽かどうか。それが全て。走っていて楽だと感じる強度であればそれは低強度です。逆に、楽に感じない強度であれば、いかなる場合においてもそれは低強度ではありません。


 どういうことかというと、この強度という考え方は同じ人間でもその日その日で変わるということです。例えば、あなたの感覚的に普通なら1km5分というペースは「楽である」という印象持っているとしましょう。しかし、前日に1000m×10本のインターバル走をやったとします。その翌日、1km5分で走ってみると、あら不思議。これまで楽だと思っていたはずのそのペースが、楽に感じない。


 こういうケースにおいては、1km5分というペースは「低強度」にはなっていません。前日の疲労を勘案すると、もう少しペースを落とさないと低強度の範囲に収まりません。そう、強度で管理するというのは、こういうことです。その日のコンディションも含めての強度で考える必要があり、そういう意味で「主観的に楽に感じる」というのが定義なのです。


 では、そんな低強度走がなぜコスパよく速くなれるのか?ここからはその理由を4つに分けて話していきます。


低強度走がコスパが良い理由1:簡単に量が増やせる

 低強度走というのは、すなわち楽である強度だと先述しました。楽であることの最大の便益は、簡単に量が増やせるということです。


 そもそも長距離走やマラソントレーニングにおける基本的な考え方は、できるだけ練習量を増やしていくことにあります。そのメリットは後述しますが、練習量や練習の頻度、また練習密度を上げていくことで、端的にいえば長距離仕様の体がどんどん出来上がっていきます。逆に練習量が少ないと、どうしても中々長距離を速く走るのに適した体になりづらいです。


 長距離走・マラソンでどれくらいのタイムが出せるのかというのは、基本的にその人の基礎体力の大きさで決まります。基礎体力というのはつまり、どれだけ疲れにくく壊れにくいかということです。これが高いと、たくさん練習しても疲れにくいし、怪我もしにくい。よって結果的にやりたい練習がたくさんできるし、またその練習に対して体がしっかり適応するので、速くなれます。


 低強度走はその点、いかんせん楽なので量を簡単に増やせます。練習機会も簡単に増やせます。これがもし強度が高ければ、どうしても翌日に疲労が残ってしまうので、量が増やせません。そもそも、高強度な練習って苦しいので、一気にたくさんの距離を走ることも難しいですよね。なので、量を増やすにはある程度一回あたりの強度を抑えるのが良いのです。


低強度がコスパが良い理由2:有酸素能力が向上する

 量が増やせるというところから得られるメリットは莫大です。まずは有酸素能力の向上です。


 長距離走やマラソンは誰もが知る有酸素スポーツです。有酸素運動で一番求められる力は、体内で酸素を使ってどれだけエネルギーを生み出せるかということです。酸素を使ってエネルギーをたくさん生み出すには、酸素をエネルギーに換える器官である「ミトコンドリア」の働きを改善したり、その数を増やすことが最も大事です。


 まず有酸素運動の量が増えると、明らかにミトコンドリアの働きが改善して、量が増えます。この時点で、同じ酸素の量が体内に入ったとしても、生み出せるエネルギーの量が変わります。酸素からより多くのエネルギーを生み出せるのようになるので、同じペースで走るにもエネルギーの余裕ができ、当然走力は向上します。


 また、もう一点有酸素能力の向上につながる点があります。それは、たくさんの有酸素運動ができるようになることで、毛細血管密度が向上するということです。そもそも酸素は呼吸で肺に入って、そこからヘモグロビンと結びついたあと、血液に乗って体内に巡ります。その時のいわゆる「交通網」が血管です。毛細血管密度が上がるということは、より体の隅々まで血管が張り巡らされることを意味するので、より多くのミトコンドリアに酸素が届けられ、無駄なく酸素をエネルギーに換えられるようになるため、有酸素能力が向上するのです。


低強度がコスパが良い理由3:体の耐久性が上がる

 量が増やせることによるメリットはまだまだあります。体の耐久性の向上です。具体的には骨格筋(体の筋肉)や靭帯、腱、骨といった体組織の耐久性が明らかに向上します。そして、疲れにくく壊れにくい体が実現します。


 理由は単純です。強度が低いからこそ量が増やせるからです。走る量が増えるということは、単純に長い時間の間足の接地の際の衝撃に耐えることになります。また、接地の回数も当然増えます。それに耐えていることで、どんどん耐久性は上がっていきます。


 逆に練習量が少ないと、中々この辺りの耐久性が上がっていきません。高強度なトレーニングは、一回あたりの負荷が高いので、それで鍛えられそうな気はするのですが、練習量が増やせないため案外耐久性の向上という点においては弱いのです。


低強度がコスパが良い理由4:心筋が強化される

 前項であえて「骨格筋」という書き方をしたのには理由があります。もう一つ重要な筋肉も鍛えられるからです。それは「心臓」です。心臓も筋肉です。低強度走をしっかり積み上げていくことで、この心臓の筋肉も着実に鍛えられていくのです。


 よく心肺機能という言葉を耳にするかと思いますが、その際に重視されるのは「心拍数」です。運動強度をあげても、この心拍数があまり上がらずにいられるというのは、心肺機能が強いとされるのですが、これはもう一つ重要な要素があることを忘れてはいけません。そうです。「一回拍出量」です。


 一回拍出量とはつまり、心臓の一回の「ドクン」でどれだけの血液を送り出せるか、ということです。この一回拍出量が大きい人ほど、一回のドクンで体内に多くの血液を届けることができます。よって、心拍数は上がりづらくなるのです。


 では一回拍出量を多くするにはどうしたら良いのか?ということですが、それは心臓の筋肉を鍛えることが一番です。そのためにも低強度走がまた一役買ってくれるわけです。


 なぜなら、一回拍出量の最大値(一回最大拍出量)に到達するためには、最大心拍数の60~65%で良いからです。わかりやすくするために、この数字を計算してみましょう。例えば私の例で言えば、最近の最大心拍数の数値は190回/分です。この65%で計算すると、124回/分が一回最大拍出量に達するに必要な心拍数ということになります。


 ここでもう一つ考えたいのは、この最大心拍から65%という数字の強度は、主観的にはきついのかどうか?ということです。これは多くの場合きつくはありません。あくまで目安ですが、多くのランナーさんの場合、平均心拍数が140回/分以下であれば低強度の範囲内に収まるでしょう。もちろん私も例外ではありません。つまり私にとって124回という心拍は、明らかに低強度です。それくらいの強度でも、一回拍出量は最大値に到達するのです。


 その上でまた「量の恩恵」が受けられます。124回程度の心拍数の楽な強度でも一回最大拍出量に達するにも関わらず、練習量は増やせる。となると、必然的に心臓の筋肉はしっかりと鍛えられていくわけです。ここでも、高強度な練習であることが非効率なことがわかります。なぜなら、高強度な練習は確かに心拍数は上がるけれど、きつくて量が増やせないので心筋を鍛える機会が増やせないこと、そして、高強度のトレーニングによる心拍数よりもはるか前段階ですでに、一回最大拍出量には到達しているからです。


低強度がコスパが良い理由5:回復しながら速くなれる

 最後の理由は、低強度走の特性にあります。それは、低強度走とは唯一「回復しながら速くなれる」練習だということです。


 長距離走・マラソンで速くなるためのミソは、継続的に体に有酸素刺激をかけ続けることにあります。つまりできるのであれば、完全休養で走らない日を設けるよりも、楽なペースでもいいから毎日走れる方が良いです。


 その点低強度走は、強度が低いので翌日に疲労を残さないどころか、慣れてくればむしろ回復することも可能です。でも、先述の通り心臓の筋肉は鍛えられるわ、耐久性は上がるわ、ミトコンドリアの機能は改善するわで、鍛える要素もあります。体は回復しているのに、速くなる。そんな嘘みたいな状態を実現できるのが低強度走なのです。


低強度だけで速くなれるのか?

 ここまで低強度走の利点を話してきましたが、ここで一つ疑問を持たれたかもしれません。それは、低強度だけで速くなれるのか?ということです。


 正直に言いましょう。走歴が浅い方、練習量がまだ非常に少ない方であれば可能です。具体的には走り始めてまだ一年以内、もしくは普段の練習量が月間100kmを下回るくらいの方なら、低強度走をひたすら積み重ねて練習量を増やすだけでも十分に速くなる可能性はあります。


 しかしながら、それ以上の水準で走っている方に関しては、低強度走「だけ」で速くなるのは難しいかもしれません。低強度走を時間かけて積み重ねていくことで、当然もう少しレベルが上の方でも速くなることは全然あります。ただ、低強度走はあくまで基礎体力のベースを引き上げるものであり、それだけで速くなるわけではないことも忘れてはいけません。


 ただ、もちろん低強度走が無駄なことは一切ありません。ある程度のレベルの方でも、これを積み重ねることで基礎体力は上がるので、結果的に他の練習(中強度以上、距離走やインターバル含む)のレベルを上げていくことができます。そしてそういった練習のレベルが上がるので、レースの結果も良くなります。実際これを書いている私は現在、フルマラソンは2時間32分で、ハーフマラソンは1時間8分ですが、低強度走はガンガンやります。そして、その積み重ねで今でも重要な練習のレベルが上がっていますし、その効果を実感しています。


 要するに、低強度走をうまく使って練習量を増やして基礎体力のベースを上げて、作ったベースの上にうまく中強度や高強度な練習を組み合わせていくことが求められるのです。ただ、そのベースすらなければ、組み合わせる選択肢すらも減ってしまうので、それを避けるには低強度走はとても有効だということです。


 ここまでお読みになった方は、最後にもう一つ疑問を持たれるでしょう。それは


トレーニングの組み合わせはどうすべき?


 ということです。これについては正直奥が深すぎて、一言で申し上げることは大変難しいです。ただ、私がトレーニングを考えるときに徹底的に意識しているある三つの法則があります。それが


1、収穫逓減の法則(トレーニングはやればやるほど、そこから得られる効果は下がる)

2、リスク逓増の法則(トレーニングはやればやるほど、故障やオーバートレーニングのリスクが上がる)

3、適応の法則(トレーニングはやったら強くなるのではなく、やってそれに「適応」して初めて強くなる)


 です。これは私自身の経験もそうですが、元々はある一冊の本に書いてあり、そこから学んだことです。その本とは大阪マラソン日本人トップの元プロランナー・池上秀志が書いた「詳説長距離走・マラソンが速くなるためのたった3つのポイント」というものです。もしあなたもこのような法則をもう少し詳しく知りたいなら、ぜひ本書を読んでみてください。


 本書は今後長期的に走力を伸ばしていくための基本原則について解説した本で、まさに長距離走・マラソンが速くなりたい全ての市民ランナーの為に書かれたもの。著者である池上秀志は、プロランナーとして自分の脚で稼ぎ生計を立てるべく、世界の一流指導者、一流選手の元に直接行って指導を仰ぐため、ケニア、ニュージーランド、ドイツ、オーストリアなど海外を単身で飛び回ってマラソンが速くなる真理を追求しました。


 さらに洋書・和書問わず数百冊の本を読み込み、膨大な知識を身につけました。その知識と経験から導き出された、長距離走・マラソンが速くなるための根本原則3つを本書では解説しています。


 実際本書を読んで最も恩恵を受けたうちの一人が、この記事を書いている私自身です。元々私は高校まで陸上競技をやっていましたが、そこから8年間のブランク(全くの運動なし、喫煙歴6年程度)があり、8年越しに市民ランナーとして再び走り始めた当初、たったの20分のジョギングで息は絶え絶え・・もうレースに出るなんてことは想像すらつかず、フルマラソンなんて夢のまた夢でした。


 しかし、幸いにも市民ランナーになって初期の段階で本書に出会った私は、最初から適切なトレーニングの原理原則を抑えてトレーニングに励むことができ、その後走力は劇的に変わっていきました。実際、私のベストタイムは市民ランナーとして走り始めた今から3年前と比べてびっくりするくらい変わりました。



(3年前)

・5km→18分40秒

・10km→40分ちょっと

・ハーフマラソン→1時間28分25秒


 ↓↓


(現在)

・3km→9分2秒

・5km→15分25秒

・10km→32分24秒

・ハーフマラソン→1時間08分21秒

・マラソン→2時間32分18秒



 もちろん、ここまで記録が伸びる過程で取り組んだことは一つや二つじゃありません。何冊も本を買って読んで、YouTubeでも動画を見まくったり、いくつかの練習会に参加してみたりもしました。


 その中で一つ確実に言えるのは「詳説長距離走・マラソンが速くなるためのたった3つのポイント」に出会ったことが、これだけ記録を伸ばす最短ルートの入り口になったということです。


 本書は入門書としての側面もあり、迷ったときにはいつでも見返せるようにデザインされています。本来は1000円で販売していますが、この記事をお読みいただいたあなたにもぜひ、ランナーとして見える景色が変わるこの感覚を味わっていただきたい、成功を応援したいという想いから、現在メルマガ登録で無料でデータをプレゼントさせていただいています。


 ランナーの方であれば、お手元にあって損はない一冊です。ぜひ、今すぐに下記より受け取っていただけませんか?








ウェルビーイング株式会社副社長

らんラボ!代表

深澤哲也

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ランニング書籍

講師紹介
​ウェルビーイング株式会社代表取締役
池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

​ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤 哲也

IMG_5423.JPG

経歴

中学 京都市立音羽中学校

高校 洛南高校

↓(競技引退)

大学 立命館大学(陸上はせず)

​↓

大学卒業後

一般企業に勤め、社内のランニング同好会に所属して年に数回リレーマラソンや駅伝を走るも、継続的なトレーニングはほとんどせず。

2020年、ウェルビーイング株式会社の設立をきっかけに約8年ぶりに市民ランナーとして走り始る。

感覚だけで走っていた競技者時代から一変、市民ランナーになってから学んだウェルビーイングのコンテンツでは、理論を先に理解してから体で実践する、というやり方を知る。始めは理解できるか不安を持ちつつも、驚くほど効率的に走力が伸びていくことを実感し、ランニングにおける理論の重要性を痛感。

現在は市民ランナーのランニングにおける目標達成、お悩み解決のための情報発信や、ジュニアコーチングで中学生ランナーも指導し、教え子は2年生で滋賀県の中学チャンピオンとなり、3年生では800mで全国大会にも出場。

 

実績

京都府高校駅伝区間賞

全日本琵琶湖クロカン8位入賞

高槻シティハーフマラソン

5kmの部優勝 など

~自己ベスト~

3,000m 8:42(2012)
5,000m 14:57(2012)
10,000m 32:24(2023)
ハーフマラソン 1:08:21(2024)

​マラソン 2:32:18(2024)

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