今回のお話は「マラソンでサブ3したいけど、どうやったらそのレベルに辿り着けるのかイメージが湧かない」という人に向けた内容です。もしあなたが将来的にサブ3を目指している、もしくは、もう見えるところまで来ているのだけど、あと数分が遠いと感じているなら、ぜひ読み進めてみてください。
そもそも、サブ3のイメージが湧かない、4分15秒/kmで42.195kmを走り切れる想像がつかない、ということには、ある原因があります。それは、、
やることを細分化できていない
ということ。
実はサブ3を達成するにはちゃんと手順があり、その手順を細かく見ていけば、案外そう難しいことではないとお分かりいただけるはずです。
そうは言っても、サブ3というのはどうやら市民ランナー人口のうちの3%程度しか達成出来ていないという話もあり、ひとつの勲章であることもまた事実。こうした背景もあり、どうしてもサブ3とは「難しいもの」という印象を持つ方が多いでしょう。
実は、サブ3が難しいものだと思われがちな理由の一つに、ネットで出回る荒っぽい情報があります。どういうことが説明しましょう。
あなたはネットやSNSで、こんな情報を見かけたことはないですか?
これができればサブ3!な練習3選
・3分50秒で1000m5本
・4分00秒〜05秒で20km
・4分30秒で30km
この練習について一言言わせてください。そらそうやろ!(笑)と。
上記で上げたようなトレーニングができれば、そりゃサブ3はできるかもしれません。なぜなら、こういう練習ができる時点で既に強いですし、サブ3できる力が備わっていると考えるべきだからです。
問題はそこではないのです。どうやってその練習やんねん。というところなのです。
確かに上記で挙げたような練習は、決して十分とは言えない気はしますが、おおまかには間違ってはいないと思います。ですが、こういう練習ができるようになるにはどうすれば良いのか、ここの部分を誰も説明をしてくれないのです。ですから今日は、私がその部分を3つの手順に分けて解説したいと思います。
1つ目の手順:最終的にやりたい練習を決める
まずサブ3の為のマラソントレーニングを考えるにあたってとても重要なのが、サブ3をするために最終的にやりたい練習はなんなのかを決めることです。
長距離走の基本は2つしかありません。長い距離をゆっくり走るか、短い距離を速く走るかです。この両面のレベルを引き上げていくことでしか、速くならないのです。
そして、私が言う最終的にやりたい練習というのは、それぞれの面のいわば"究極形態"となる練習です。いわゆる「これができればサブ3できるな」と自信を持って思えるトレーニングです。具体的なメニュー例を挙げるならば、4分30秒〜40秒での40km走、2kmー1kmの変化走を4分と4分30秒で5~6セット、などです。
「これができればサブ3できるな」と自信を持って思えるトレーニングという観点から言えば、先述したようなネットでよく見かけるトレーニングも、この究極形態に近い練習なのかもしれません。ただ、やはりゆっくり長い方の最終形態はやはり40km高強度走(レースペースの90%程度)、せめて35kmは走っておきたいところですし、短く速い方の究極形態は単に1kmインターバルではなく、マラソンペースよりもちょっと速いペースと、マラソンペースよりもちょっと遅いペースで回す変化走を入れたいところです。なぜなら、マラソンレースが近づけば近づくほどレースペースに近い練習が重要になるというのは、100年以上の歴史があるマラソントレーニングの中で既に世界中の数々の選手や指導者が実証した基本原則だからです。
だからこそ、とりあえずマラソンペースよりも速いペースで余裕度を上げておけばOKというようなノリで、マラソンに必要ないペースでガンガン疾走して、休息を2分も3分ものんびりジョグでガッツリ取って行う1000mインターバルよりも、疾走ペースはマラソンペースよりもちょっと遅いくらいで収めつつ、その代わり休息区間もマラソンペースよりもちょっと遅いくらい(=決して楽とは言えないくらいのペース)で回復させる感覚を掴める変化走の方が、速く走る練習の最終形態としては適当であると言えるでしょう。
2つ目の手順:最終形態の前段階で到達したい練習を決める
ここからが本題と言っても過言ではありません。1つ目の手順だけで終わってしまっては、「それをどうやってやったらええねん」問題が解決しませんからね(笑)
冷静に考えてみていただきたいのですが、先ほど紹介したような“最終形態”となるような練習って、いきなりやれと言われてできるでしょうか?おそらく、大半の場合において難しいでしょう。先ほども言いましたが、それができる時点で既にサブ3の力がついているわけですからね。サブ3の力がない現状では、最終形態になるような練習は普通はできないものです。
なので、その前段階となるトレーニングができるようになるというのが踏むべきステップとなります。その前段階となる練習を、この段階では決めておきたいところです。ここでのポイントは、最終形態の前段階に当たる練習は、最終形態の練習よりももう少し抽象度が高くても良い、ということです。例えばですが、最終形態でやりたい練習が40kmの高強度走なら、その前段階としては35kmや30kmを中強度でできるようになっておきたい、とか。
また、短く速い方で言えば、1kmインターバルをマラソンペースよりももう少し速いペースである4分ちょうどでできる本数を増やしていく、もしくは休息を短くしてもできるようになる、という風な目標を立てるなどです。
そしてこの段階の練習は、一つ決めたらOKというよりは、ある程度幅を持って「だいたいこのレベルくらいの練習をできるようになっておきたい」という基準で決めると良いかと思います。例えば、「レース3週間前に高強度な40km走をやりたいから、レース4週間前には35kmや中強度で、そのさらに1週前には30kmを中強度で余裕持ってできるようになっておこう」といった具合です。
この段階のトレーニングは、あくまである程度抽象度が高いのですが、レースが近づくにつれてレースに近い刺激に近づけていくという基本原則も忘れてはいけません。ちなみにこういうレースに近い練習を「特異的トレーニング」と言います。
ただ、この段階のさらにもうひとつ前に必ずやるべきことがあります。それが、、、
3つ目の手順:特異的トレーニングができる体を作る(=基礎づくり)
そうです。基礎づくりです。長距離走・マラソンにおいて、根本的に自分をレベルアップさせる手段はもう基礎づくりしかありません。どれだけ基礎作りができるかによって、その後の特異的トレーニングのできるレベルが変わり、最終形態となるトレーニングのレベルが変わり、マラソンの結果が変わるのです。
言うなれば、カブトムシの幼虫です。カブトムシの成体の大きさは、幼体の頃にどれだけしっかりと腐葉土を食べ、栄養を蓄えたかによって決まります。サナギの時点ではもうサイズが決まっているように、マラソントレーニングも最終形態の時点ではもうほとんど当日できる走りの上限は決まっているのです。
基礎構築は全てのベースです。そのベースを作るのは短いインターバルや、登坂走、低強度の距離走といった、一見マラソンからはかけ離れたようなトレーニングがほとんどです。まさに、ゆっくり長くと短く速くの最も「部品」的なトレーニング。これ単体だけやっていたのでは、とてもじゃないけどマラソンを走ることは難しいでしょう。ですが、やるべき時期にこういったトレーニングをしっかり詰めてやっておかないと、どうしても今よりも上のレベルに到達することは難しいです。つまり、「今サブ3でマラソンを走ることを想像できない」という人がまず何よりも取り組むべきなのは、この基礎構築なのです。
基礎構築のポイントは、一回一回で追い込み切ることではありません。それよりもタイムなどはそんなに気にしなくてもいいから、週全体・月全体として密度の高いトレーニングをすることが非常に重要です。極端に追い込む日もないけれど、極端に走らないこともない、というイメージです。トレーニングの密度を高めていくことで、体の回復力が向上し、その後負荷の高い特異的なトレーニングをやっても故障をしづらくなります。故障の原因の多くは、量ではなく質です。基礎ができていないのに、いきなりガンガン質の高いトレーニングをやろうとするから、マラソンレースのちょうど1ヶ月前とかくらいに痛みが出てきたりするのです。その前段階でしっかりと基礎を作っておけば故障のリスクも少なく、質の良い特異的トレーニングができるので、自ずとサブ3レベルへと近づいていくでしょう。
このようにして、全ては逆算で考えていくことが大事です。今紹介した手順は、逆算になっているはずです。そう、考えるのは逆算で、そして実行は逆に「3→2→1」の順にやっていくのです。
そしてもうひとつ重要なことは、できるだけ多種類の刺激を体に入れるということです。例えば基礎構築段階におけるスピード系のトレーニングでも、ひたすら毎回200mのショートインターバルばかりやるよりも、登坂走を入れたり、400mのインターバルにしたり、ファルトレクをしたりと、出来るだけバリエーションをつけた方がよりトレーニング効果は享受できます。
このように、強くなっていくためには基礎から特異への組み合わせしかなく、このようにひとつひとつ手順を追って課題をクリアしていくことが、最も確実であり効率の良い方法なのです。月間100km台でサブ3!みたいな情報もちらほら見かけますが、正直言ってあれは効率が良くありません。なぜなら、その程度の練習量だとどうしてもできることが限られてくるというのと、逆算の考え方も持ちにくいからです。
逆に今回紹介した手順に基づいてしっかりと逆算して計画を立て、トレーニングをうまく組み合わせていくことさえできれば、巷で言われてるくらいの「これができればサブ3!」の練習くらいは自然とできるようになるはずです。そして、気づけば自然とサブ3レベルまで到達しているはずです。
どのようにトレーニングを組み合わせていけば良いのか?
サブ3に向けた手順はなんとなくわかった。あと残る問題は、実際どのようにトレーニングを組み合わせていけば良いのか?ということですよね。陸上経験もないし、トレーニングのバリエーションだってそんなにあるわけではない。。
もしあなたがそのような状況なら、ぜひお勧めしたい書籍があります。それが「マラソンサブ3からサブ2.5の為のトレーニング」です。
こちらの書籍では、マラソンを運動生理学、一流選手のマラソントレーニングシステムの過去110年間の発展の流れ、市民ランナーの為のトレーニングシステムの3つの観点から、A5で200ページ以上にわたって図も入れながら解説しています。
筆者は大阪マラソン日本人トップの経験もあるプロランナーで、現在ウェルビーイング株式会社の代表取締役を務め、年間500名以上の市民ランナーの方を指導し、数々のサブ3、サブエガ、そしてサブ2.5ランナーまで育てた指導者でもあります。
日本でサブ3からサブ2.5の為のトレーニング(女性の場合は3時間15分から2時間45分)についてここまで詳しく的確に書いている本は今のところないと言って良いと思います。巻末には、実際に筆者の池上秀志が、もし自分がサブ2.5を狙うならこうする、という視点で書いた20週間分のトレーニング例も載っています。実は私は2022年11月の神戸マラソンが終わってから、2023年3月の琵琶湖マラソンまでのトレーニングは、本書の巻末のトレーニング例をかなり踏襲して行ったのですが、記録が3時間15分から2時間47分まで伸ばすことができました。
こちらの本はエリート市民ランナーになりたい市民ランナーの方にとって非常にリーズナブルな投資だと思いますが、全ての人に読んで欲しい本ではありません。
これから、本気でサブ3、サブエガ、その先を目指していきたいと考える方、また今はそのレベルではないけれど、いつかは絶対に目指してみたいという方のための本です。紙書籍版は、まさにそんな方のためのバイブル。ぜひお手元に一冊置いて、困ったときや迷った時は何度でも読み返して、エリート市民ランナーへの階段を駆け登ってください。
本書はすでにこれまで第3版まででていて、全て完売しています。現在第四版を200部限定で販売中です。少しでもご興味を持っていただけましたら、この機会をお見逃しなく、ぜひ手に入れてください。
読者様の声
「マラソンサブ3からサブ2.5の為のトレーニング」ざっと読み終えました。
世の中に小手先のランニングテクニックの本はたくさんありますけど、本書はマラソントレーニングの核心部分を突いた内容で大変勉強になりました。
自分の問題が明確になり、将来のビジョンや現状の自分に何が足りないのか?将来に向かってどうすればよいのか?を考えるヒントが散りばめられています。マラソントレーニングは目標に向かって緻密に準備して作り揚げる行為は芸術的だと捉えるべきだと思いました。 今後の自分のトレーニングに大変参考になりました。 【山本様(仮名)】
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面白すぎて一瞬で読み終えてしまいました。笑
ビギナー向けではないのでしょうが、ベテランナーには至高の1冊でしょうね。池上さんのメルマガは毎回欠かさず目を通しているので、見覚えのある内容もチラホラありましたが、一冊の本として手元に置いておけるのは非常ににありがたく感じます。
個人的に一番面白かったのは歴史の所で、過去の偉人たちのトレーニングが現代に繋がっていく様子を追える所が新鮮でした。あと、前半の理論的な話はユーモラスな語り口のおかげで難解な内容でもスッと入ってくる様に感じました。
最後のレース直前準備~あとがきは心にグッと響きましたね。笑 【田村様(仮名)】 ===
ぜひあなたのお役に立てますと嬉しいです。
ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤哲也
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