トレーニングを継続していて、ある程度のレベルに達した時に悩ましいの問題として「練習のレベルをいつ上げるのか」ということがあると思います。
これまで色々なところで話してきている通り、トレーニングをして強くなるための原則としては「負荷と適応」の調和を図ることだということがありますが、これはつまり体に負荷をかけて、その負荷に対して体が適応すると、当然体は元の負荷では物足りなくなってくるわけです。
ビジネスとかでもそうですよね。例えば新人の時はお茶入れ一つでも手間取ることがありますが、慣れてくるとお茶入れくらいの仕事では手間取らなくなります。要するに毎日お茶入れをすることで、お茶入れの手際はよくなるわけですね。
ですがその後10年くらいお茶くみだけやっていたとしても、お茶くみは爆速でできるようになるかもしれませんが、ビジネスマンとしてレベルアップしているかというとそれは甚だ疑問が残ります。
要するにマラソンでも、走り始めて初めの方はある程度走る頻度を上げたり、走る量をただ少しずつ増やしていくだけでも走力が向上しますが、一定のレベルになると同じ事をしていてもその伸び率が鈍くなっていくものです。これについてはすでに経験されている方も多いと思います。
では問題となるのが、トレーニングのレベルをいつ上げるのか?ということです。言い換えるとトレーニングのレベルの「上げ時」というのは、何を基準に判断すればよいのかということになると思います。
多くの方は、自己ベストを更新したタイミングだったり、インターバルまたは距離走など、自分の中でのメイン練習ができるタイムが向上した時などと考えると思います。ですがこれらの要素は、その時々のコンディションによっても変わりますし、レースに関してはある程度そこに体の状態を合わせていっている部分もあるので、必ずしも自己ベスト更新=体が強くなった とは限りません。
私はこれに関しては自分の中で一つ答えを持っていて、それは「回復の早さ」を見るということです。つまり、ある程度きついトレーニングをして、次にまたある程度体が頑張れる状態に戻るまでのスピードを見るということです。
実は最近、実際にこれを感じることが私の周りで起こりました。私は滋賀県に住む才能あふれる中学2年生陸上部員のR君の陸上コーチングをさせていただいているのですが、彼は今年の4月くらいから如実に走力が向上しました。自己ベストで表すとこんな感じです↓
〇R君中学1年時ベストタイム
・800m 2分18秒
・1500m 4分36秒
・3000m 9分50秒
↓↓↓
〇R君中学2年ベストタイム(現在)
・800m 2分08秒(すでに4回マーク)
・1000m 2分48秒(練習で出たレース)
・1500m 4分24秒(練習で出たレース)
タイムの成長は一目瞭然なのですが、実は私はこの成長をシーズンに入る前の3月ごろから予期していました。なぜかというと、このR君の練習の密度が明らかに上がっていたからです。
練習の密度が上がったというのはつまり、一回一回の練習のダメージからの回復が早くなり、常にそれなりには高い強度でのトレーニングを積めるようになったということです。
元々は一回インターバルや脚づくりの為の距離走をすると、割と3日くらい軽めの練習にしないと疲労感が取れず、次にしっかり強度を上げて走れなかったのですが、今では高強度の練習を入れても1日、2日程度の休養でしっかり回復しますし、中強度くらいであれば3,4日は連続で続けられるようになっています。
私は彼を指導する中で、この回復力の向上をこれまで2度感じました。1度目は今年の2月~3月、そして2度目はここ2週間ほどのトレーニングを見ているときです。前回、3月に回復力の向上を感じて、そのタイミングで全体的にトレーニングの量と強度を少しづつ高めたのですが、そこから1~2か月後には早速それがタイムの劇的向上に表れています。ということは、もう一度今そのタイミングが来ているので、これでトレーニングのレベルをまた上げていけば、更に走力が飛躍する可能性があるということです。
このように、単にレースで走れるタイムが上がったとか、インターバルのタイムが上がったとかというところを見て練習のレベルを上げるのではなく、身体の回復力がどれだけ向上していて、練習の密度を濃くしても「あれ、意外とできるな」と感じた時が、トレーニングレベルを上げるその時なのではないかと思います。
ちなみに、話の対象が中学生ということで、それは成長期だからじゃないのかと思われると思いますが、むしろそれよりもこのトレーニングの密度が高くなったということの方が要因としては大きいと私は考えています。まあ確かに大人の場合はこのR君ほど短いサイクルでレベルアップの時が来るかどうかはわかりませんが、でもそういったタイミングは必ず来ると思っています。
ですので、トレーニングを継続的にされていて、どこでそのレベルを上げていくべきかと迷った方に関しては、ぜひその上げ時を判断する一つの見方として、今回のお話を参考にしていただけますと幸いです。
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ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤 哲也(ティラノ)
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