戦前の1936年ベルリンオリンピックに1500mに出場し、当時の日本記録3分56秒をマークし、その後中国大陸で従軍、戦後は早稲田大学競争部を箱根駅伝優勝に導いたり、東急陸上部から8人も東京オリンピックに選手を送り込んだり、日本記録保持者やオリンピック選手を1ダースも育て上げた中村清先生が次のように言いました。
「どれだけ優れた文学作品もせんじ詰めればアイウエオの組み合わせ、どんな優れた音楽もドレミファソラシドの組み合わせ。マラソントレーニングもせんじ詰めれば、スピードと距離の組み合わせに過ぎない。これらをいかに組み合わせるかで、駄作にもなれば、芸術的大作にもなる」
私は中学校で陸上部に入ってから27歳の現在まで走り続けてまいりました。その中で、たくさんの挫折を味わいました。腰から下で故障したことがない箇所など一つもありません。オーバーワークで結果が残せなかったことも多々ありました。何度、悔しくて泣いたか分かりません。
同時にささやかな成功も経験してきました。都道府県対抗男子駅伝6区での区間賞、京都府高校駅伝3年連続区間賞、全国高校駅伝や都道府県対抗男子駅伝での9人抜き、西脇工業にいらっしゃった名選手志方文典さんの区間記録を更新しての浜名湖駅伝4区区間賞、当時関西学生歴代4位に値するハーフマラソン63分09秒で川内優輝さんを下しての谷川真理ハーフマラソン優勝、大阪マラソン日本人トップの2位(2時間13分41秒)、成功と書くには小さすぎますが、その都度両親には喜んでもらえる程度の結果ではあったでしょう。
それらの挫折とささやかな成功(成功と呼べるかは怪しいですが)を繰り返してきて一つ確信したことがあります。それは長距離走には色々な要素があるけれど、一番大きな要素は練習の組み合わせだということです。要するに、先述の中村清先生の教えが体感を持って理解できたということです。
では、ここで一つ質問です。確かに文学作品はアイウエオの組み合わせであり、音楽はドレミファソラシドの組み合わせです。では、長距離走・マラソントレーニングは何の組み合わせでしょうか?確かに速度と距離の組み合わせではあります。ですが、実際問題としてマラソントレーニングに5m100本のインターバルという練習はあり得るでしょうか?もちろん、可能性としてはあり得ます。しかし、実際にはあり得ないでしょう。
ピアノで言えば、絶対に弾かない鍵盤があっても仕方ないのです。では、どの鍵盤なら弾くのでしょうか?それを本書で明らかにしたいと考えました。もちろん、そこには筆者の主観が入っています。本書に書いてある練習以外にも有効なものはあるでしょう(極端な話1000m10本ではなく、1005m10本という練習も有効なはずです)。
ですが、本書は長距離走・マラソントレーニングを複雑にするためではなく、シンプルにするために執筆いたしました。私が後はこれさえ組み合わせておけば良いというトレーニングを羅列していきます。要するに、とりあえずここでは音楽におけるドレミファソラシドをシャープまで含めて全て書き出す、或いは日本語におけるアイウエオからワヲンまで書き出して、その後の組み合わせはまた後で考えましょうという魂胆です。
それでは、私たちだけのドレミファソラシド、アイウエオを作っていきましょう!
〇筆者紹介〇
ウェルビーイング株式会社代表
池上秀志(いけがみひでゆき)
経歴
中学 京都府亀岡市立亀岡中学校
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高校 洛南高校
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大学 京都教育大学
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大学卒業後
実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。
~自己ベスト~
3,000m 8:26.12
5,000m 14:20.20
10,000m 29:26.50
30km 1:31:53
ハーフマラソン 1:03:09
マラソン 2:13:41
主な実績
・都道府県対抗男子駅伝 区間賞
・関西インカレ 二冠
・京都選手権 優勝
・近畿選手権 優勝
・谷川真理ハーフマラソン 優勝
・ハイテクハーフマラソン 優勝
・上尾ハーフマラソン 優勝
・グアムハーフマラソン 優勝
・全日本琵琶湖クロカン 2位
・ケアンズマラソン 優勝
・大阪マラソン2017 2位(日本人トップ)
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