今回は、LLLTと骨折治療の関連性について書いてみたいのですが、皆さんは骨についてどのようなイメージを持たれているでしょうか?骨というのは、考えてみると結構面白い体の器官です。ちょっと偏見や固定観念も入れながらの執筆になりますが、分かりやすい対比で言えば、欧米は筋肉中心に人体をとらえ、日本人は骨を中心に人体をとらえるとする考え方があります。
反論もあるとは思いますが、ウェイトトレーニングなんかは完全に欧米から入ってきたものです。ストロイド注射によって、筋肉ムキムキの体にするという考え方も欧米の考え方であり、アメリカでは短距離ランナーからメジャーリーガー、俳優まで大流行しましたが、日本ではそこまででもありません。筋肉が体を包み込み、筋出力が大きくなれば自然と身体能力は向上するという考え方です。あながち間違ってはいません。私も大人になってからの方が、小学生の時よりもおそらく野球は上手くなっているのですが、本質的に上手くなっているというよりはただ単に体が大きくなって、遠くまでボールを投げられる、遠くまでボールを飛ばせるというそれだけのことです。でも、理由は何であれ、実際に上手くプレーできるのであれば、筋肉によって野球が上手くなったと言えるでしょう。
一方で、日本人は骨を中心にものを考えるので、それが言葉にも出ています。例えば、コツを掴むという言葉はもともとは骨を掴むです。言葉の由来には諸説ありますが、昔の治療家が骨の位置をチェックして、骨の位置を正常化して、痛みの治療に励んでいたという説や武士が闘う時に骨をどう使うかということを考えていたという説があります。個人的には、その総合だと思います。
また体という字も古くはにんべんではなく、骨という字が左側に来ていました。そのくらい日本人は骨を中心に人体をとらえています。今でも日本体育大学の体は骨という字を左側に持ってくることがあります。現在では、大殿筋とハムストリングスで地面を押すイメージなどのように筋肉で説明することが多いですが、古武道などでは、どこどこの骨をこう使うイメージと骨で説明していたようです。柔よく剛を制すなどはその典型で、筋肉ではなく、骨を上手いこと動かして、力の強いものに勝とうという考え方です。
そんな骨ですが、骨は体の中でも非常に硬く骨そのものは曲げ伸ばしが出来ず、皮膚のように伸縮もしないので、非常に無機質な感じがするのですが、骨も筋肉などと同じように骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞などから出来ています。骨芽細胞は骨の合成や鉱化作用にとって非常に重要な細胞です。鉱化作用も骨の形成の一プロセスなので、平たく言えば、骨芽細胞という骨の赤ちゃんのような細胞があって、この子がすくすくと育っていくと丈夫な骨になるということです。
骨細細胞は骨芽細胞が成長したもので、カルシウムをたくさん含んだ成熟した骨へと成長した骨です。破骨細胞は骨の再形成に欠かせない細胞で、古くなった骨細胞を吸収することで、骨を再形成します。骨は人体の中でも、何となく金属棒のような無機質なイメージがありますが、新陳代謝を繰り返し、日々生まれ変わっています。ちなみにですが、一応血管も通っています。
骨折からの回復過程においては、組織の損傷に伴い、急性期の炎症反応が生じ、骨の再形成という過程をたどります。イメージとしては、完全に軟部組織と同じで、壊れた建物のがれきを除去して、新しく建物を立て直すというプロセスと完全に同じです。この過程においては当然、細胞の増殖、分化、成長といった過程が含まれます。
そのように考えたときに、骨の怪我にも大きく2種類に大別することが可能で、1種類目はいわゆる普通の骨折で、軟部組織の故障で言えば、急性期の炎症です。このケースは交通事故で骨折したとか、コンタクトスポーツにおける骨折とかと同じです。陸上競技でもごくまれに、3000m障害の選手がハードルに脚をぶつけて骨折するというケースがあります。
しかしながら、陸上選手に多いのは、どこかを強打しての故障ではなく、疲労骨折です。疲労骨折というのは、ある運動を繰り返すことで、局所的に負担がかかり、骨折してしまう現象です。よく例えられるのは金属疲労です。金属も曲げては伸ばしてを何回も繰り返していると、折れてしまうのですが、疲労骨折も同じ現象だという訳です。
ただ、大きな違いは生体というのは新陳代謝を繰り返しているということです。先述の通り、骨も実は日々新しく生まれ変わっているのです。ですから、使いすぎたから疲労骨折するというふうに一概には言えません。否、もう少しきちんと日本語を書きましょう。使いすぎたら、疲労骨折するというのはほぼ同語反復ですね。~すぎというのはそもそも程度がはなはだしくて、もはや悪い状態のことを指す言葉ですから。
正確に書くなら、何回跳んだら、何回投げたら、どれだけ走ったら、跳びすぎ、投げすぎ、走りすぎになるかは、生体における代謝プロセスと関連性があるので、一概には言えないということです。これが金属疲労なら材質が同じなら、だいたい何回曲げたら折れると正確な数字が出せるはずです。ですが、人間の体はそのようには出来ていません。
実際に代謝に問題を抱えていると特にスポーツをしていなくても、骨が折れることはあります。代表的なものは骨粗しょう症です。骨粗しょう症については、説明は不要だと思いますが、骨の再形成のプロセスが正常に行われず、骨密度が低下する病気です。また骨に含まれるミネラルの量も少なく、折れやすいうえに、折れても治りにくいのです。極端なケースにおいては、咳をしただけで背中や胸の骨が折れるくらいです。
そして、意外と知られていないのが、2型糖尿病です。2型糖尿病は膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインシュリンというホルモンが分泌されなくなり、血糖値のコントロールが出来なくなる病気です。2型糖尿病も代謝に問題を抱えることになるので、実は骨密度が低下したり、骨に含まれるミネラルの含有量が減ってしまいます。
そして、これは人体全てに言えることなのですが、2型糖尿病や骨粗しょう症と診断されるかされないかの二択であったとしても、その間には段階があるということです。病気と診断されなくても、その予備軍の人もいれば、オリンピックに骨競技というものを導入すれば、骨金メダリストというものも作れるでしょう。要するに、健康か病気かの二択ではなく、完全に病気から骨金メダリストまで、かなり広範な段階があるということです。
スポーツ選手に関しても、全員が全員100%健康などということは絶対になく、中には骨の代謝が不活発になっている人もいるでしょう。そうすると、疲労骨折もなかなか治らないのです。そして、最も重要なことに疲労骨折は問題の一部でしかないので、痛みがなかなか取れなかったり、パフォーマンスがもとに戻らなかったりと、そういった問題にも対処する必要が出てきます。
LLLTと骨折治療
歴史的にも(と言ってもせいぜいここ半世紀)、LLLTと骨折治療、骨の形成に関する実験が繰り返されており、試験管内実験、動物実験、臨床試験などの結果から骨折治療にLLLTが有効であることが、主張されています。主なメカニズムとしては、LLLTが骨内の血管新生が促進され、骨の中に活発に血管が張り巡らされるようになり、様々な栄養が運び込まれるようになることが挙げられます。そして、骨芽細胞、骨細胞の成長を促し、新しい骨の形成を促します。そして、炎症反応を抑えるとともに、骨の形成にかかわる遺伝子発現を促します。
試験管内の骨細胞
オザワさんらの実験では830nmの波長のLLLTをネズミの頭蓋骨に照射したところ、1日目から13日目までの照射において、コントロール群と比べて有意に骨細胞の成長が促進されました。その後、14日目以降はLLLT群とコントロール群との間に有意な差は見られませんでした。何故14日目以降有意な差が見られなかったのかということですが、LLLTの機能の特徴として、ホメオスタシス機能(恒常性維持機能)の向上が挙げられます。ホメオスタシス機能というのは、正常な値を維持する機能です。
一番分かりやすい機能としては、熱が38度まで上がれば、体は熱を下げようとするし、熱が34度まで下がれば、体は熱を上げようとする機能のことです。ですから、骨が折れていれば、治そうとしますが、何もジャックと豆の木のように骨を天まで伸ばそうとするわけではないということです。これは試験管内の実験においても、同様の結果になるでしょう。何故なら、そもそもDNAに含まれている情報には限りがあるからです。ちなみにですが、この実験でも骨の形成に関する遺伝子発現も促進されたことが確認されました。
ジョードらによる別の実験では、940nmの波長のLLLTが使われたが、同様にコントロール群と比べて有意に細胞の骨芽細胞、骨細胞の増殖、分化、成長が確認された。
動物実験におけるLLLTによる骨折治療
LLLTと骨の治療の関係性を調べた初期の実験の一つはバルシュカらが行ったもので、632nmの波長のLLLTをネズミの脛骨の欠損に対して用いたものです。この実験では、コントロール群に比べてLLLT群では5日目と6日目に有意にアルカリホスファターゼの増加が確認されました。アルカリホスファターゼは骨芽細胞に含まれる酵素で骨が新生されているときに、多く産生されます。このことから骨の新生が活発になっていることが分かります。更に12日目にはマクロファージや破骨細胞が有意にLLLT群で増加していました。マクロファージや破骨細胞は壊れた建物の例で言えば、破壊されて散らばっているがれきを除去する役割の人たちです。
LLLT照射群では骨の欠損から10日後、13日後、15日後に新しい骨の形成が確認され、研究者らはコントロール群の2倍の速さで骨が形成されたと結論付けました。
またその数年後の実験では、コントロール群においては骨の欠損後15日たっても、新しく血管が新生されることが確認されなかったのに対し、LLLT群では7日後にはすでに、新しい血管が誕生していることが確認されました。骨の再生においても血液にのって様々な栄養素が流れ込むので、血管の新生は非常に重要です。
またバティスタらが興味深い実験を行っており、830nmの波長のLLLTを大腿骨と脛骨が欠損したネズミを使った実験で、今度は放射線治療と組み合わせて一回だけではありますが、30ガンマの放射線を照射した群とLLLTのみの群に分けて実験を行いました。その結果、なんと放射線治療を行った群ではLLLTの効果が確認されなかったのです。理論的には、放射線照射とLLLT照射はほぼ真逆の働きを行います。
LLLTは炎症反応を抑え、細胞の正常死であるアポトーシスを引き起こし、DNAの傷を修復します。一方で、放射線治療は炎症反応を高め、DNAを損傷させ、異常な細胞死であるネクローシスを引き起こします。私はがん研究の専門家ではないので、ここでは結論を明言はしませんし、読者諸兄の皆様にも私は医療専門家ではないことを分かったうえで読んで頂きたいのですが、私がもしガンになったら絶対に放射線治療は受けずにLLLTで治療します。あとはケトン食療法は瞑想によるイメージ療法で治療を試みるでしょう。馬鹿にする人も多いかもしれませんが、一つ断言できることは、放射線治療や長期入院で健康を蝕まれ、人間としての尊厳を失って死んでいくよりは、最後の最後までこうやって仕事をしながら、自分で出来る治療を続けて死んでいく方が良いということです。本題からはずれるので後でご自身でも調べて頂きたいのですが、ガン治療は健康状態をさらに悪化させ、最後は廃人のようになって死んでいくケースが後を絶たないのです。
がん細胞も細胞です。ですから、基本的には細胞に悪い放射線治療を使えば、ガン細胞は死ぬのですが、正常な細胞までが傷つき、長期にわたる放射線治療において、トータルではマイナスの方が大きくなるのではないかと思います。ちょうど殺虫剤と人間の関係と同じです。虫に取って有害なものはたいてい人間にとっても有害なのです。逆に、虫が食ってるような野菜は、人間にとっても安全で栄養価が高いことがほとんどです。
また、バティスタの研究結果として他に明らかになっていることは、LLLTの照射によって、正常な骨の密度が際限なく増加する訳ではないということです。要するに、折れた骨の治療にはLLLTが有効だけれど、健康な骨の骨密度が際限なく増大し、鉄人28号のような丈夫な体になることはないということです。
LLLT VS 超音波
骨折の治療に超音波治療器が使われているのをご存知でしょうか?私も実は一度だけ使ったことがあります。劇的な効果は感じられませんでしたが、当て始めてから少し治りが速くなったかなという経験があります。幸か不幸かLLLTに出会ってからは一度も疲労骨折をしていないので、個人的な経験談として、LLLTと超音波を比較することは出来ないのですが、研究結果を簡単にお伝えしたいと思います。
リラーニ・ガルヴォらの実験では、780nm、30mW、112.5J/㎠のLLLTと1.5MHz、30mW /㎠の超音波で週5回の合計12セッションで対照実験を行ったところ、LLLT群においては超音波群とコントロール群と比べて有意に骨の再形成が進んでおり、その証拠としても骨芽細胞の数が増えていたそうです。一方で、超音波の方では破骨細胞の数が増えており、研究者たちは骨の再形成そのものにはLLLTが有効で、骨の吸収を高めるには超音波の方が有効であると結論付けました。骨の吸収という意味が非常に分かりにくいのですが、要するに、壊れた建物で言えば、がれき除去がスムーズになるので、その後の再建の準備が整いやすいということです。
ファヴァロ・ピッピらの研究グループもほとんど同じ実験を行い、同じような結論を導き出しています。さて、他にもまだまだ骨の形成とLLLTに関する実験はたくさんあるのですが、だいぶ長くなってきましたので、この辺りで筆を置かせて頂きます。
LLLTは実は他にもたくさんのメリットがあります。LLLTについてもっと詳しく知りたい方には『詳説LLLT』という無料レポートをご用意しておりますので、下記のURLより問い合わせページに入り、『詳説LLLT』と入力して、送信してください。
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